SmartFDC™:機械学習による異常検出

タイラー・クリステンセン – 製品開発部長、INFICON

バックグラウンド

適切に構成されたFDCシステムは、プロセス、設備、故障モードに関する詳しい知識、さらにシステムを設定および維持するための協調努力を必要とします。たとえセットアップが完全に行われていたとしても、それはすでに想定されている故障状態に基づいているにすぎません。熟慮されたエンジニアリングアプローチには常に価値がありますが、機械学習アルゴリズム(人工知能の一部)は新しいFDCプログラムと既存のFDCプログラムの両者に重要な利点をもたらすことができます。

INFICONの知的生産システムグループは、これらの先進アルゴリズムの効果を活用することにより、時系列ツールデータにおける異常を自動的に検出する新しい製品を設計しました。このSmartFDCという名称の拡張パッケージは、歩留まり損失を引き起こす可能性がある問題点をすばやく特定することでお客様のFDCチームを支援します。

標準FDCを補完するSmart FDC

このシステムでは、各チャンバーから収集されたデータを使用して、自動的にアルゴリズムを学習し(教師なし学習)、異常が検出されればそれを報告します(図1)。

図1:新しいSmartFDCパッケージはFDCへの標準エンジニアリングアプローチを補完します。

分析結果は、直感的なウェブベースのユーザーインターフェースに表示されます(図2)。ここから以下のことが可能となります。

  • プロセスデータの傾向グラフを含む現在および過去の異常の閲覧
  • 追跡用の異常フラグの表示
  • アルゴリズムとの情報交換
  • 職能に関係する結果の絞り込み

図2:SmartFDCのダッシュボードには、異常カウント、相対的な重大度、エンジニアによる追跡用としてツールに対するフラグが表示されます。

簡単に行える精緻化によりSmartFDCの精度を向上

結果の精度をさらに高めるために、ユーザーはシステムのエンジニアリング知識に基づいてアルゴリズムを「教える」ことができます(教師あり学習)。例えば、既知のトリミング違反、ノイズ問題、ウエハーテスト工程などは偽異常をもたらすことがあり、それらを今後の稼働に際して無視するようにシステム教えることで、その後の異常検出結果を改善することができます(図3)。

図3:SmartFDCシステムに、特定タイプの信号の無視および影響の重度の分類を教え込み、異常検出を改善します。

INFICONソフトウェア製品との統合

このシステムには出荷時に、他のINFICON製品との統合機能を組み込むこともできます。例えば、INFICONの Metrology Sampling Optimizer を組み込めば、SmartFDCで異常が検出された場合、計測時に自動的にマテリアルをサンプリングするルールを構成することができます(図4)。

図4:異常が検出された場合、SmartFDCはMetrology Sampling Optimizerに警告を発して、測定用の追加ロットにフラグを設定します。

まとめ

SmartFDCにより以下のことが可能になります。

  • 新しいツール取り付けやセンサーハードウェア用にベースライン検出システムを迅速に確立する
  • システム維持に必要な費用を抑えることにより、FDCの全所有経費を削減する
  • プロセス/技術の変更に迅速に対応し、多大な労力を要することなく解析を追加/有効にする
  • エンジニアによって想定されていなかった問題を検出する
  • 予期せぬ状況を監視することにより、製造逸脱リスクを低減する

SmartFDCは、工場での先進能力の実現に向けて進化するINFICON製品の次なるステップです。

INFICONは現在複数の顧客と提携して、製造環境においてシステムの試験を実施しており、2021年の第1四半期での販売を予定しています。